かつて北海道では知らない人がいないほどの英会話ブランドであったEC英会話（現在のNOVA）の創業者の一人であり、北海道で行われる冬季アジア大会の際には通訳・翻訳を請け負った組織団体を担う人物から、私は私の会員制語学スクール「Atlasマンツーマン英会話」をEC英会話本社の目の前（札幌大通）に立ち上げた時、人づてにメッセージをいただいたのです。
その時は正直言って、何を言っているのか全く分からなかったのですが、それ以上に自らの意思でアメリカから日本に戻り、日本で起業した私にとって、余りにも自明な選択肢であり、それが自明である以上、困難なことなど待ち受けているはずがない、と素朴に信じていたことから、だからこそ若干の反発を覚えたことを今でも懐かしく想い出します。
では実際どうだったのかというと、大変でありましたが、今でも大変であることには変わりがありません。ただ、人生とは面白いもので、必要な時に必要なことを教えて下さる方々が常にいるものなのです。そうした方々の一人から、物事の出発点にあたっては心の故郷へ帰るのがいいと聞き、今、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコの景色を窓外に眺めながらこのコラムを書いています。
私の場合、起業はなぜ大変であり続けているのかというと、ある時から思い描いたイメージに対して、何をすれば良いのか、何がハードルなのか、そのハードルはどれくらい細かくすれば自分が乗り越えることが出来るようになるのか？などについて自然と考えるようになったからでしょう。
ところが世間では必ずしもそうではないらしく、日本で起業してから気付いたことですが、このようにして思い描くことが全く出来ない人というのがかなりの数、存在するようなのです。もちろん、関わりを持つことがないのであれば何も問題ではないのですが、大変なのはこうした人たちと一緒に仕事をするようになった場合です。
この手の方々は想念が弱いため、それを補うべく特定のスキルは身につけていることが多く、そして最近でこそ、私はその人が持って生まれた行動特性と、身に付けたスキルとを区別して採用選考をするようになりましたが、昔は必ずしもそうではなく、専門性や年齢などによる必要なスキルをむしろ重視して採用していました。その結果、イメージが出来ず、ましてや私のイメージとの同期が出来ない従業員たちとオフィスで日々の格闘が繰り返してきたのです。
こう言うと「想念などというが、要するに独りよがりなのでは？」と思われる方もいることでしょう。しかし、それがそうではないのです。なぜなら、私がアメリカを自らの意思で飛び出し、おぼろげながら思い描いた想念に基づいて日本で起業するにあたり抱いたイメージとは、「日本がデフォルト（国家債務不履行）に陥りそうになりつつも、首の皮一枚のところで復活を遂げ、その勢いで日本の新しい時代を迎える」というものだからです。そこに利己的な思いなどないのです。
そして不思議なことに、この意味での想念を抱きつつ、起業を推し進めていくと、日本国内のどこでも同じ想念を抱かれている方々がいることがわかったのです。「日本にそんな雲をつかむようなことを考えている一般人が本当にいるのか？」と思われるかもしれませんが、これは本当の話なのです。
そしてこれらの想念をシェアできる方々と私は何のコミュニケーション上の困難を抱えることがないこともわかりました。そして「これから何をすべきか？未来をどう考えるべきか？」についてもスムーズに意思疎通し、社員同士でも講師同士でも、そして生徒同士でもコラボすることができます。
しかも、こうした想念をシェアできる方々はこのことの持つ余りの重大性がゆえに、休むことなく働かれている共通点があります。何もそのように無理に自分を仕向けているわけでは決してないのですが、とにかくその時が来るのを目指して前へ、前へと進まれています。
そしてその結果、他人が働いていない時間帯にも普通に働くため、それなりに豊かな人生を送られています。決して富裕層というわけではないですが、たいていの事であれば賄えるレべルにはすでになれています。不思議なことですが、決まってそうなっているのです。
|
