先月放送されたNHKテレビのスペシャル番組では、現代社会に広がる見えない貧困について特集していました。観ているだけでも激しく気分が落ち込む内容でしたが、今も10年前も表面的には何にも変わらないように見えますが、若者の間で見えない貧困が急激に広がってるといるというのです。
ところで、なぜ貧困が見えないのかには3つのポイントがあります。まず一つ目に、ファストファッション(最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた服)や格安スマホなど物質的な豊かさによって粉飾されているとありました。そして二つ目に、高校生のアルバイトなど子ども達が家計の支え手になっているということです。
最後の三つ目には、本人が貧困を隠すために、教師や周囲の大人が気づきにくいことがあります。アルバイトの掛け持ちとかで疲れ切って学校に行けない高校生、そして貧困で進学を諦める高校生が増えているということです。このNHKスペシャルはインターネット上で大きな話題になり、ツィッターでもトレンド入りしています。
同じ地域に住んでいても、一方は恵まれて悩みのない世界に生きてるくせに好きなことを言い、一方は恵まれない世界に生きていて、それを黙って聞くというような格差が生まれていることははっきりと分かりました。つまり、日本は富裕層と貧困層がはっきり分かれて棲み分けがどんどん進む社会になってきているということです。
今でも放送されているサザエさんのような30年以上も前の日本社会を誰もが共通に共感できなくなりました。実のところ、日本人のひとり一人が子どもの頃から住む世界が違っていて、富裕層は富裕層で楽しく暮らしているということなのです。
富裕層は、貧困層の暮らしには共感することもなく、そもそもどういう生活を送ってるかも知りません。一方、貧困層も富裕層のことをまったく知りません。いつの間にか棲み分けが進んでいて、現代の日本社会は誰もが究極の「自分だけ」社会になったと言えるでしょう。
「今だけ、金だけ、自分だけ」
私たちAtlasでは、このことについてかなり前から研究していましたが、今の社会や経済の仕組みは数年で破綻せざるを得ないでしょう。しかし、今後もますます若者は苦しく貧富の差もますます開くことになります。そして今後、これ以上何も出てこないようなぎりぎり限界まで究極の「自分だけ」社会が進んでいきます。
今、1%の人は楽しく暮らしていますが、99%の人は静かに耐え忍んでいるように見えます。そして2020年の東京オリンピックを開催するべきかしないかのタイミングで、そこから今までとは別の経済の仕組みが誕生することになりそうです。
なぜなら、今現在、金融資本主義崩壊が見え始めていることで、日本古来の産業資本主義+民族資本主義に戻りつつあり、その日本は世界の中心に立ち、それを動かす立場に置かれる可能性があるからです。つまり日本の本質とは、強迫観念にかられつつ富を集積することが自己目的化したシステムではないため、ついには「人命の消費・商品化」としての戦争経済にまで手を出し、何とか経済を回そうなどということは不要になってくるのです。
最後に、「自らが全うに働き、価値を創出した分だけ、モノを得ることが出来る」という考え方は、その意味での形ある自己実現こそが、人間社会の基盤に置かれる世界の始まりでもあります。「格差」などという議論はそこでは消失することになります。
なぜなら、生まれながらにしてハンディキャップを負った方々への救済は別とすれば、要するに自らが得ることが無いのは自らが努力していないから、という余りにも単純な帰責の方程式がそこでは再び常識となるでしょう。
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