ビットコインを筆頭とした仮想通貨すべてのチャートを一目見れば、確かに15世紀にオランダの黄金時代に引き起こったチューリップ・バブルとそっくりなのが分かります。当時は珍しいチューリップの球根に人々が熱狂し、球根1個の値段がときに家一軒以上の値段に達しました。そして、バブルが崩壊するとそうした球根は瞬く間に99.%も下落し、バブル形成から崩壊まで約1年でした。
また、1988年に起きた平成バブルでは東京23区の土地の値段でアメリカ本土を2個分買えたほどでした。1991年までの間に起きた日本の土地バブルにも似ています。土地バブルの崩壊は、日本の財務省が銀行に土地の売買への融資の総量に制限を加える規制がきっかけで崩壊したとされています。
そして、この信じられないような仮想通貨の価格上昇の後に中国当局のICO禁止が決まりました。さらに、アメリカのSEC(証券取引委員会)もICOに対する規制に乗り出しています。アメリカ政府は、マネーロンダリングに使われる可能性のあるものに関しては厳しい態度を取っており、仮想通貨がこの先優遇されることは当分ないはずです。さらに、日本の税務当局も、仮想通貨取引に対する非常に不利な税制を発表しました。
日本では株や為替の証拠金取引は分離課税で、確定した利益に対して20%の税金と優遇されています。また、損失の繰り越しも3年分は可能ですが、今回の日本の税務当局の発表では、個人投資家の場合は雑所得になり、所得税がそのままかかってしまい最高税率は50%にもなります。
さらに、損失が出た場合にも他の所得と通算できなく、損失を翌年に繰り越すこともできません。つまり、まとまった利益が出た場合、50%近くの税金がかかり、損失が出てもまったく救済はなく、会社から受け取っている給料などの税金を取り返すこともできないわけです。
これでは、税金で優遇されている株や為替の個人トレーダーが、新たに仮想通貨に参入するインセンティブは非常に乏しいものになると思います。結局、日本、アメリカ、中国は仮想通貨市場の発展を好意的には考えていないようです。少なくとも、優遇するという意向は、まったくないことがこれではっきりとしてきました。
日本では、仮想通貨を円に替えて利益を確定させなければ税金がかからないので、仮想通貨は売ってはいけない、という前提があり、その税金を回避する方法が広く信じられているようです。しかし、この方法は決定的に間違っています。
なぜなら、どこかの時点で日本円に替えて使わなければ、そもそも仮想通貨投資を行う必要はないわけで、将来どこかの時点で使うなら必ず課税されることになるからです。それなら一度で全てを課税されるほうが、累進性から所得税率が高くなるので、毎年、利益を確定させて、税金を毎年払ったほうが得です。
このように日本の仮想通貨の個人投資家の多くが、この間違った節税テクニックを信じていますが、ますます、彼らは仮想通貨を一方的に買うだけのロボットにされてしまうわけです。そして、買うから上がる、上がるから買う、という典型的なバブルを形成しています。
仮想通貨市場では、株式や為替の市場と違いプロのトレーダーが参加していません。しかし、さすがに多くの自動売買が行われ、取引所同士で価格差が生まれた時には裁定取引が行われています。日本の仮想通貨取引所同士での価格差は、現時点ではほぼ消失しています。
しかし、海外の市場とのビットコイン価格の差は大きく開いています。これは海外市場との市場間裁定取引で簡単に儲けられるということではなく、為替や送金手数料、そして仮想通貨の送金に関するタイムラグや送金コストなどに起因しているようです。
そして、日本市場は常に裁定条件が許すほぼ上限の価格で取引され、日本人が常に購入していることが分かります。その証拠に私は、日本のビットコイン価格が他の取引所より安くなっていることを一度も見たことがありません。今年は常に日本のビットコイン価格が一番高くなっています。
この状況は、2000年に日本で為替の証拠金取引が流行した時、日本の個人投資家たちがゼロ金利政策で金利がゼロであった日本円を売り、ドルやユーロを買って金利を稼ぐ円キャリー・トレードを行い、為替相場に影響を与えたミセス・ワタナベと似ています。
そして、仮想通貨市場は外国為替市場と比べて小規模のため、そのインパクトも絶大なものとなっています。日本のSNSを中心に、日本人はいま仮想通貨に熱狂しています。このただ買い続けるロボットと化した多くの日本人に、バブルが崩壊する前に殺されてしまう可能性もあり、それはリスクとは無縁ではいられないはずです。
バブルが崩壊するということを正しく予測することと利益を得られるかどうかは、また別の話です。それでも個人的には、この仮想通貨バブルの崩壊すると考えています。他のすべてのバブルと同じように、今回の仮想通貨バブルだけは違うなどとことはありません。
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