世界で最も安全な長期国債と呼ばれる10年もの米国債の利回りが、株価大暴落の直前まで約4年ぶりの高水準まで上がっていたことがわかりました。
利回りは昨年9月から上昇傾向で、2017年末頃から急激に上昇し始めていました。債券というのは、信用、つまり価値が高いほど金利が低くなる傾向があります。そのような中、今回の利回り上昇は、長期米国債の安全性が疑われていることを示しているわけです。
2018年年初からアメリカに対する信用失墜を象徴するドル安と長期米国債の利回り上昇の両方が起きていますが、米国債は世界中のすべての債券の頂点に立っており、米国債金利の上昇はアメリカの優良企業が資金調達する際の社債の資金コスト増にも繋がっているほどです。
長期米国債がこのまま3%を超えることになると、企業のコストが増え、経済への悪影響が急拡大することになるのは間違いありません。今回の株価大暴落前には、長期米国債の2.7%超えに対し、財界金融界はアメリカの衰退と企業のコスト増という面から大きな騒動になっていたようです。
このように、世界の債券の先頭に立つ長期米国債はアメリカ金融市場の象徴になっていますが、一方、世界の債券の最後尾に位置するジャンク債はアメリカ金融市場のバブルの象徴と見られています。
このジャンク債の金利は、今年に入って長期米国債と逆に低下傾向で、史上最低の水準を維持しています。ジャンク債金利が低い限り、倒産寸前の企業も比較的安いコストで資金調達できることで好景気を演出でき、自社株買いや企業買収さえ行っているため株価も下がりにくくなっています。
要するに、アメリカはトランプ大統領の意図的な戦略として覇権の放棄が起きている一方、バブルの膨張がまだ続いているというわけです。
しかし、トランプ大統領からフェイクニュースと呼ばれているほとんどの主要メディアでは、長期米国債の金利上昇の理由を「アメリカと世界の経済成長によってインフレ懸念が増大し、それが金利に上乗せされて利回り上昇になっている」と報道しています。
誰がどうみても明らかにこの説明はトランプ大統領が言うとおりフェイクニュースです。なぜなら、アメリカでは1980年代から金融市場の規模が拡大し、実体経済の規模よりはるかに大きくなったため、実体経済の価格が金利変動の主な要因でなくなっているからです。
金利変動の主な要因は、金融市場に参加している投資家のリスクに対する感受性でしかないわけです。例えば、株を買うことを投資家が扇動され続けるとバブルは膨張しますが、逆にバブルが崩壊すると扇動されると投資家のリスク感受性が拡大し、金利が上昇することになるわけです。
アメリカではかなり金融バブルが膨張しており、それが株高など経済成長しているかのように見えるだけで、すでに実際の経済成長は統計値より少ないことが明らかになっています。
長期米国債の金利上昇の一つ目の理由は、これまで日本銀行とと欧州中央銀行(ECB)が量的緩和を減額し始め、証券会社や銀行が自国の国債を買えるようになったことにより、米国債を嫌々ながら買う必要がなくなったからです。
そして二つ目の理由は、トランプ大統領への懸念を強めた世界各国が、ドル安やアメリカ発のバブル崩壊を予測し、米国債を買わなくなっているからです。
米国株を買わなくなったのは中国や日本などのアジア諸国に多く、今年にはいってからすでに報道されています。特に、中国政府は米国債の金利上昇を先送りし、その間に売ってしまうため嘘をついている可能性があります。
その証拠として、中国政府の債券格付け機関は最近、米国債を格下げしていることがわかっています。中国は、米国債を欧州などを経由して迂回購入してきたため、数ヵ月しないと購入の全体像が見えてこないようにしているようです。
最新データを見ると、日本も中国も米国債の購入を明らかに減らしていることで、今後トランプ大統領の覇権放棄の効果が出てくるほど世界的に米国債は買われなくなっていくと考えられます。
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