本日、4月14日の正午にかけて、米軍はシリアに70分間の空爆を行った。これは、イギリス・フランスも連合で参加しているということです。マティス国防長官はホワイトハウスで行われた記者会見の中で「攻撃の第一波は終了した」と述べたが、現在の緊迫したシリア情勢の中、アメリカとロシアの緊張が高まりつつあり、武力衝突の可能性すら出てきています。
4月7日、シリアの首都ダマスカス近郊の反体制派支配地域、東グータ地区のデューマ市で、化学兵器を使用したとみられる空爆があり、少なくとも子供を含む21人が呼吸困難の症状で死亡したと欧米のマスメディアによって報道されました。
自称民間人権団体のシリア民間防衛隊「白いヘルメット」は、塩素ガス弾が使われ、40人以上が窒息死したと主張しており、すでに数百人が治療を受けているとみられ、犠牲者はさらに増える恐れがあるとのことです。
4月9日、トランプ大統領はホワイトハウスで開いた閣議会議で、シリアでの化学兵器使用を「残忍で凶悪」と非難し、今後48時間以内に重大な決断をするとの考えを示しました。4月8日にはトランプ大統領自身が「アサド政権は大きな代償を払うことになる」とツイッターで警告していますが、今回もトランプ大統領によるわざと地政学的リスクを用いたボラティリティー創出によるものだと考えられます。
また、イスラエル軍も中部ホムス県の空軍基地をミサイル攻撃したと報道されています。シリア政府軍兵士ら14人が死亡し、アサド政府軍と共闘するイラン人兵士も含まれているということです。ホムスへの攻撃についてシリア国営テレビは当初、米軍によるものと報道しましたが、アメリカ防総省は関与を否定しています。
これを時系列で見てみると、昨年4月6日の状況と酷似していることがわかります。その時は、シリアのイドリブ県でシリア政府軍がサリンガスを使い、アメリカはロシアに支援されたシリア政府軍の仕業だと断定し、巡航ミサイルでシリア政府軍の空軍基地を攻撃しました。
アメリカは、今回も昨年同様に何らかの報復攻撃に出ると見られていて、それは昨年を上回る大規模な70分間の空爆の実施につながりました。欧米諸国では2020~2021年に金融メルトダウンを通じて画策しているのは事態の収拾ではなく、混乱の維持と拡大を通じた世界の刷新である可能性が高く、今回のシリア危機は典型的な手段として地政学リスクの演出を行っていると考えられるわけです。
例えば、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件後に、当時のラムズフェルド国防長官が連邦議会で米軍が二正面作戦をするほどの能力を有していないと証言していることです。一方、フランスは東グータ地区での化学兵器利用に関する証拠を持っており、今回の爆撃に参加しました。
アメリカが北朝鮮に対する攻勢に注力する一方、2010年のリビアを巡る欧米の角逐のように欧州諸国が中東へコミットメントを増大させつつあり、欧米諸国がグローバル規模で地政学リスクを演出していることに注目する必要があるということです。
トランプ大統領は、アメリカ時間13日夜にホワイトハウスでシリア攻撃命令を出しました。その一方のロシアは、攻撃があったとされている東グータ地域を独自に調査をしたと報道されています。その結果、攻撃があった証拠もなく、また死体もなかったとし、化学兵器の攻撃が起こった事実そのものに疑念を訴えています。
そうした状況の中、国連安保理では化学兵器の使用を国連機関の一つである化学兵器禁止機関(OPCW)に任せるべきだとするロシア案と調査のための新しい機関を設立し、その期間が調査すべきだとするアメリカ案が対立しています。
さらに、独立系メディアの多くで調査したジャーナリストからは、今回の攻撃に化学兵器が使用されたとしても、それがシリア政府軍の犯行とはどう見ても考えられないとしています。
そのジャーナリストたちの根拠は、アルカイダ系のイスラム原理主義勢力に占領されていたダマスカス近郊の東グータ地区は、その90%がシリア政府軍の支配下にあり、化学兵器を使った攻撃を行う必然性がまったくないことです。
また、唯一抵抗していたイスラム原理主義の反政府勢力は、シリア政府軍に実質的に武装解除されており、東グータ地区からバスで撤退中だったと述べています。シリア政府軍が完全に勝利しつつあったこのような状況であえて化学兵器を使用するとはどう見ても考えられないというわけです。
これはシリア政府軍の仕業であるどころか、アメリカに支援されたイスラム原理主義勢力による自作自演の可能性が極めて高いことは、3月にロシアが行った警告から明らかになっています。つまり、今回の化学兵器攻撃で、ロシアのこの警告が実質的に証明されたことになっているわけです。
|