村上世彰氏の投資会社レノが東京国税局から3年間で15億円の申告漏れを摘発されました。過少資本税制違反というもので、この適用は大変珍しい事例です。
この税制は海外に子会社を作るときに、例えば10億円の資金が必要な会社だとした場合、資本金1億円、親会社からの借入金9億円の合計10億円とするか、初めから資本金10億円とするかと考えると、親会社からの借入金9億円とした場合、仮に支払利子5,000万円を親会社に支払うとその5,000万円は子会社の損金にできるものです。
同様に資本金10億円の場合、親会社に5,000万円支払ったときの項目は支払配当金である。当然、配当金は税引後の利益からしか出せないため、この5,000万円は損金とはなりません。
このため、海外子会社設立にあたり、税務上、できるだけ資本金を少なくして、親会社からの借入金を多くする傾向にあります。それが親会社からの出資に比べ借入金が過大な場合に、支払利息の損金算入を認めないとする制度が過少資本税制です。
今回の舞台も、またシンガポールでした。村上氏は日本非居住者でシンガポール居住者です。つまり日本に住んでいなくてシンガポールに住んでいるので、彼の所得に対して日本の国税局には課税権がないはずです。彼は東京都心にレノという投資会社を設立しました。レノは村上氏から100億円の資金を借入れ投資に充てていましたが、村上氏に3年間で15億円(金利約5%)を支払い、支払利息として損金計上していました。
この15億円について東京国税局は過少資本税制を適用して否認しました。この税制は1992年(平成4年)に成立しましたが、いまだかつてこの税制で課税追徴を受けた会社はありません。彼はニッポン放送株を巡るインサイダー取引で有罪判決を受け、しかも昨年は株価操縦の疑いで強制調査が入り現在も続いています。東京国税局からすると、彼は永遠におたずね者扱いなのでしょう。
3年間で利息収入の15億円も、日本なら所得税を課されますが、シンガポールでは金融取引は非課税です。払った方は損金になり、受取った方は益金になりません。これは日本では許されないのです。日本の国税局も手をこまねいて見ているのも腹が立ちます。
彼のようなシンガポール在住の日本人富裕層はいっぱいいますが、絶えず日本の課税当局は彼らを注視しています。シンガポールや香港以外なら、これほどまで目の敵にされないでしょう。仮にこの会社がアメリカのデラウェア州にあればまったく違ったことになったことでしょう。
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