今日の石油製品純輸出量を見ると、過去たった2年の間でも、ピークは2016年7月の月間249万トンに対して、底は2015年2月のマイナス100万トン前後と、かなり大きな振幅で動く変数だということがわかります。
良いワイナリーで丹精込めて育てたワインと違って、原油は寝かせれば寝かせるほど味もよく、価格も高くなるという商品ではありません。だから、石油製品メーカーは、原油を買いすぎてしまったときには、ある程度出血覚悟で精製して売ってしまったほうが、管理が悪ければ劣化することもある原油を抱えているよりは得だという場面も多いようです。
原油を買ってしまったら、とにかくガソリンやディーゼルなどのエネルギー商品や石油化学製品に仕立てて売るということになります。国内で売りさばけないものは輸出します。石油化学製品の販売先として、輸出はあまり優先性が高くないからこそ、純輸出や純輸入になり、量も大きく乱高下します。
これに対して、中国の原油輸入量は、はるかに安定しています。最小でも2015年2月の日量約プラス550万バレル、最大では今年2月の約800万バレルで最小値の45%増しに過ぎませんでした。そもそも中国は石油資源の豊かな国ではなく、世界がどう変わろうと原油の純輸入から純輸出への転換といった派手な動きにはなりません。しかし、その動きの地味な原油輸入量が、今年2月の800万バレルから7月の730万トンまでほぼ一本調子で下がり続けています。
もちろん、すでに今年の2~4月の段階で、輸入量があまりにも多すぎたともいえますが、なぜここまで伸びていたかというと、最大の理由は小規模な製油業者が、間接費の高い大手が対抗しようとしても歯が立たないほど利幅の薄い商売を拡大していたことでした。
海外から原油を買い入れる際には、買い入れ枠も小さく、割高に買わされるのですが、それでもガソリンやディーゼルとして輸出する価格は大手より安く設定して、この間中国による原油購入量を高水準に支えてきたようです。
重要なのは、中国内の原油や石油製品に対する需要は、去年夏の上海大暴落以来かなり冷えこんでいたのに、それでも何とか原油輸入を増やしていけたのは、こうした零細規模の精油所がなんとか原料代は高く、製品価格は低い環境の中でも増産ができていたからということのようです。7月までは原油輸入量拡大を支えてきた小規模な製油業者たちが薄かった利幅が消滅したのか、それとも他の商品投機に手を出していて、商品先物のレバレッジ停止令に引っかかってしまったのか、足元では原油を輸入できなくなっています。
製造業主導の経済からサービス業主導の経済への転換が最終局面に差しかかっていた1990年代以降、資源価格が高騰していたのが異常でした。その意味では、中国の小規模な製油業者の精油所でさえ原油が買いきれなくなってきた現状のほうが正常です。
しかし、この異常な商品市況ブームから恩恵を受けていた資源国、そして中国や産油国の慢性的、かつどんどん拡大する経常黒字を先進諸国の金融市場に還流することから利益を得ていたアメリカ、イギリス、スイスの金融業界には、深刻な業績懸念が浮上し始めています。
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