アメリカ大手銀行のウェルズファーゴが通貨監督局、消費者金融保護局、検察により民事訴訟を起こされ、1億8,500万ドル(200億円)で和解したと報道がありました。原因は客に黙って、預金口座やクレジットカードを作り、架空の暗証番号(PIN)、メールアドレスを設定したということです。そして、これらの不法口座開設に関わった社員を過去5年間で5,300人も解雇しています。
それでは、なぜこうなったのでしょう。原因は、ある営業戦略でしたが、つまり、1人の客にできるだけ多くの商品を売るというもので、ウェルズファーゴ銀行だけではないですが、銀行に多大な利益を計上できる戦略です。
そして、客にどれだけ多くの商品を売ったかで株価も上昇し、それによって個々の社員のボーナスも決まるというものです。ウェルズファーゴ銀行も社員に目標達成のためプレッシャーをかけ、本店営業部から各支店に毎日4回、11時、13時、15時、17時に電話があり、その都度どれだけ数字をあげたのかを報告しなければならなかったようです。なぜなら、数字をあげない者は解雇になるからです。
ウェルズファーゴ銀行の営業マンは専門用語を行内で使用していました。実際には客がリクエストした口座開設をわざと開設せず、それらの開設申込書を集めておいて、後日まとめて開設するというものです。例えば、一つの口座では開設できないので保険口座と合わせてなら開設できると客に説明を行うというものです。
大きな問題となったのは、当時リテールバンキングを統括していた女性が、昨年900万ドル(10億円)の報酬を得ており、今回の問題が発覚する直前に退職し、その退職金が1億2,400万ドル(130億円)だったからでした。
彼女の業績がこのような違法行為によるものであれば、この退職金は過大すぎるのではないかと、先週、上院議会の公聴会ではウェルズファーゴ銀行のCEOが喚問され、「責任は自分にある。顧客に多大な迷惑をかけた。申し訳ありません」と述べました。
しかし、ある上院議員が、「あなたは責任を取ると言っているが、あなたの報酬は株価に連動している。その株価が不法な行為により値上がり、報酬も増えているのだから、その報酬は虚偽のものであり、その報酬の何割かは返却すべきなのではないか」と言っているのです。
また、退職した女性の報酬も巨額の退職金も同様、返却されるべきではないのでしょうか。さらに報酬の一部を会社は取り戻すことができる法律がありますが、これを勧めています。これは、リーマンショック時に銀行が破綻寸前であるにもかかわらず、過去の期の業績を基に多額の報酬やボーナスが支払われていたことがあり、これを取り戻す法律です。
これに対してウェルズファーゴ銀行のCEOは、ここではっきりした回答はできないと答弁しましたが、議員は、担当役員は退職ではなく解雇であり、解雇であればそのような高額退職金は手に入れないはずだとしています。
最新の報道によると、ウェルズファーゴ銀行のCEOは4,100万ドル(45億円)の報酬カット、2016年のボーナスなし、調査が行われている間の報酬はなし、退職した女性も900万ドル(10億円)の報酬放棄で、役員会で合意しました。
カリフォルニア州では1年間ウェルズファーゴ銀行との証券等の取引停止、ニューヨーク州でも同様の措置を発表しました。9月29日に行われた公聴会では、「ウェルズファーゴは犯罪組織であり、CEOは解雇され、刑務所に行くべきだ」と批判されています。
アメリカの金融業界の報酬は、日本とはケタが1つも2つも異なります。それだけに不正を行うと刑務所行きになるのが多いようです。わかりやすい論理でもあります。
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