先週はアメリカのカリフォルニア州とネバダ州に一週間ほど滞在していました。やはり日本とアメリカにまたがる相続の問題は多く感じられる時代になっています。このほど日本の法務省は法務大臣の諮問機関「法制審議会」で、現在の相続制度の見直し案をまとめました。それによると「配偶者の法定相続分を引き上げる」という方針に着手したそうです。
現在の法では子供がいると、配偶者の取り分は2分の1です。この分配は50年間連れ添った夫婦も、一緒になって3か月の夫婦も同じです。これに対し新法案では、結婚後に夫婦の財産が増えた分に応じて配偶者の相続分を増やそうとするもので、長年連れ添った配偶者は夫婦の財産を増やすことに貢献してきたということで、配偶者の相続分を2分の1から3分の2に増やそうという案なのです。
しかし、この案に対し「配偶者だけが財産の増加に貢献するわけではない」「夫婦関係が壊れていても取り分が増えるのは不公平だ」など、法務省にパブリックコメントが寄せられたそうなのです。しかし、このような国民的議論は天皇の生前退位に似たものがあります。江戸時代になってから、武士である夫の甲斐性に家族はすがるものであり、妻といえども三歩退って夫の影を踏まずの考えが根底にあります。
一方、欧米では配偶者の法定相続分などとの考えはなく、夫の収入であろうが、妻の収入であろうが、それは夫婦で稼いだ金だと考えられています。アメリカ大統領のオバマとファーストレディのミッシェル夫人、大統領としての給与はありますが、ファーストレディとしての妻の収入はありません。
しかし大統領選はもとより、ホワイトハウスでの接客、外国に訪問しての公式晩餐会等、妻としての寄与があるから大統領職を全うできるのです。大統領に限らず、夫の仕事は妻がいてこそであるというのは欧米先進国の考え方です。
したがって、夫の仕事も夫婦共同での仕事です。場合によれば、妻の寄与分の方がはるかに大きい場合もあるので、夫の収入で築いた財産は夫婦共有のものであり、密接不可分もあるので、夫名義の財産を妻が100%取得しても、あるいは贈与されても課税されることはありません。もちろん個人の確定申告も夫婦で合算課税申告です。夫婦で稼いで家庭を維持し子供を育てるのは、何も夫婦片方の努力だけではないのです。
日本はどうかと言うと、たとえ夫婦であっても金銭は別です。この考え方は、先進国では通用しません。夫婦は一つなのです。つまり国際的にみて非常識極まりない考え方だといえます。夫婦間の財産異動で贈与税や相続税が発生するのは、多分日本だけでしょう。
したがって、欧米では預金も不動産も全て夫婦共同名義で行われます。そして片方が亡くなると、片方の名義に非課税で合算されます。夫婦間の財産移動に税金がかからりません。アメリカで同性愛者に結婚を認めよと主張するのは、この一点だけです。
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