「2020年までに全国500校を目指す」。英会話のNOVAが再び出店攻勢を始めているようです。従来の英会話教室のイメージを転換した「店舗・サロン」を意識した新業態もスタートさせ、強気の拡大戦略を描いています。しかし。駅前留学のコンセプトは変わらないようです。
NOVAと言えば、2007年の経営破綻を思い出します。全盛期は1000教室を超えたと言われ、圧倒的なシェアで英会話教室業界を席巻していたNOVAでしたが、18種類の商取引法違反で業務停止命令を受け、これを皮切りに坂を転がり落ちるように破綻に追いこまれてしまいました。
当時NOVAを運営していた猿橋社長は増資で危機を乗り切ろうと奔走しているなかで社内クーデターに遭い、社長職を追われました。その直後に豪華社長室が公開されるなど、汚名を着せられての退陣でした。
しかも猿橋社長は増資を取り付け、再建のメドが立つ寸前のクーデターだったこと、会社更生法の申請直後に破産手続きが開始されたことから、陰謀説もささやかれるなど、クーデターを起こした側も起こされた側も双方に影を落とす後味の悪い破綻劇だっただけに、記憶している人も多いと思います。
しかし、NOVA事業自体は学習塾等を運営するジー・エデュケーション(現NOVAホールディングス・稲吉正樹社長)にタダで譲渡され、約9年間、再生を図られてきました。現在の英会話NOVAは、2013年に設立された事業会社であるNOVA社によって運営されています。
旧NOVAが破綻した直後にリーマン・ショックが起こったこともあり、英会話教室業界の経営環境は非常に厳しいものになっていました。NOVAに続いて当時業界2位のジオスも2010年に経営破綻し、さらにマンツーマン英会話のGabaも2011年にニチイ学館にM&Aされ、上場を廃止しています。
当時のジオス楠恒男社長もクーデター発言をしており、英会話スクール業界の苦境とドロ沼っぷりを露呈していた形になっていました。ジー・エデュケーションはジオスを買収し、NOVAと相互補完の形で英会話事業を拡大させています。
英会話教室業界に追い風が吹き始めたのは、社内英語公用語化を打ち出す企業が増え始めたことでしょう。2010年に楽天の三木谷浩史社長が打ち出し、この間、社内に外国人講師を呼んでレッスンをするなど社員の英語教育に力を入れていました。
ユニクロを展開するファーストリテイリングも2012年から実施し、アサヒビール、シャープ、三井不動産、三井住友銀行、武田薬品工業、双日などが全社あるいは部署によって英語公用語化を表明するなど、その動きは加速度的に広がっていました。
もう1つの流れが、オンラインで英会話を手掛ける事業者が増えたことです。気軽さ手軽さと低価格はやはり魅力で、高額な受講料を払って対面のスクールに通わなくても、自宅で学べるならばそれを活用したいと考える人が増えているようです。忙しいビジネスマンは仕事で帰宅が遅くなることが多く、深夜でも対応できるオンライン英会話の需要は高いのです。
さて、その猿橋元社長と楠元社長には2004年頃、英会話教育業界団体「民間語学教育事業者協議会」の会合で会って話をしたことがありました。年に2~3度会うこともありました。当時のNOVAは長者番付のトップ10にも入るほど語学教育業界の歴史上初めてとなるほど繁栄の極みでした。
2006年秋頃、そして2008年のリーマンショック前に、なぜ大企業でも倒産が起きるのか、経済事件が起きるのかを説明したことが何度かありました。そして、それが起きた時の驚きようは、寝耳に水だったようでした。
週刊誌は大体2か月後に起きる事件を記事にする傾向があります。一方、新聞やテレビは昨日起きたことを記事にするだけです。短期的な未来に何が話題になるのか、個別企業の話題、事件を書くことが仕事のはずですが、当時NOVAが週刊誌で叩かれ、毎週にように記事になっていました。
多くのネットニュースでも記事になっていました。その記事をどうにか出来ないかと、相談がありましたが、Atlasマンツーマン英会話の本社があったテナントビルの真向いにあった「EC英会話」はジーコミュニケーションに買われていて1年が経っていました。そのジーコムEC英会話がNOVAを貰い受けることになっていることを話したのです。
何しろすべての報道各社に毎週NOVAと英会話スクールの悪口が投げ込まれる、それが実に3カ月以上継続しているから、それが真実と現場スタッフは信じていました。しかし真相は、会社側の説明は実にクリアで、単なる遺恨に過ぎないと倒産と同時にNOVAと英会話スクール叩きは終わりました。NOVAの上場前、未公開時代に株を他人に売った人がいました。持っていれば、数億円になったのに、売らされたと勝手に意趣返しをしていたようです。
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