マイナンバー1992人分流出 制度開始以来最大規模(毎日新聞2017年2月17日)
静岡県湖西市は16日、昨年同市にふるさと納税をした1992人について、別人のマイナンバーを記載して寄付者が住む自治体に通知していたと発表した。国の個人情報保護委員会によると、一度に大量のマイナンバーが本人以外の第三者に漏えいしたのは、2015年10月のマイナンバー制度開始以来最大規模で、マイナンバー法で定められた「重大な事態」に当たるという。同市は「個人情報が外部へ流出する可能性は低い」としている。
日本ではマイナンバーが全国民に割り当てられ、それが無いと税金申告や年金給付ができなくなるとマスメディアが報道していましたが、アメリカではソーシャルセキュリティーナンバー(SSN)が無いとアメリカ国民として暮らすことができません。日本もアメリカのそれを狙っての制度なのですが、SSNの歴史も古く、アメリカでの個人の確定申告は1ページ目にSSNの数字を書くことから始まります。
さて、アメリカでは最近、個人情報が盗まれ、勝手に確定申告が行われ、還付金を搾取される事件が多発しています。実際、納税者が確定申告を行うと税務署からは、すでに申告は行われ還付金が支払われていたと言われます。地元の新聞によると、アラバマ州ではこのような申告詐欺犯を取り締まる税務職員が、この詐欺に引っかかったという事件が起こりました。
ある日、この税務職員のもとに自分の働いているアラバマ州税務署から還付金通知が届き、個人情報の確認を行うというものでした。彼としてはまだ確定申告をしていないので、直ぐに自分の個人情報が盗まれたと直感し、この件をIRSとアラバマ州税務署に通報をして事件が発覚したのです。
このような税務申告情報を盗み、連邦及び州に勝手に確定申告を行い、還付金を騙し取るケースが近年多発しており、このような詐欺防止のため2013年は58億ドル(7000億円)のコストがかかっているとの報告があります。日本の振り込め詐欺防止みたいなものですが、特にTurbo Taxを利用して申告情報が盗まれるケースが多く、2月にはE-fileを24時間閉鎖する事態にもなりました。IRS(アメリカ国税庁)は2014年に87万5000件もの被害が出ていると公表しています。
アラバマ州の税務署のケースでは、かなり複雑な取引を経て還付金が騙し取られていることが判明しました。今回の詐欺犯は連邦税7568ドル(90万円)、州税1044ドル(12万円)の還付金があるように確定申告をしましたが、州からの還付金入金先の銀行口座番号が昨年と変更されていたことから支払がストップし、その結果詐欺が見つかったのですが、昨年と同じ銀行口座であれば判らなかったのです。
しかし、連邦からの還付金の支払は一部行われていました。このアラバマ州の税務職員は詐欺報告を行っていたため、連邦税の支払いを委託している複数の銀行に詐欺のアラートを仕掛けました。還付金の一部 $5657.43を詐欺者の口座のあるデビットカードにトランスファーを行おうとしたところ、詐欺防止アラートに引っかかりそれが出来なくなり、複数の銀行は同額をIRSに返還したというわけです。
しかし、還付金には1900ドル以上もの乖離があり、この差額はどこにいったのかを調べて見ると、詐欺犯はAmazon.com Gift card Refund Bonus Programにトランスファーをしてしまい、戻ってこないと言っていました。このAmazonプログラムについて詳細の開示を拒否していますが、確実に盗まれたことは確かです。税務職員が被害に遭ったのは傑作ですが、アメリカではこの税務申告詐欺はかなり深刻な問題になっています。
今後日本でも導入されるマイナンバー制度ですが、個人情報が漏えいする危険性をはらんでいます。フランスなど欧州の個人情報管理が徹底されている国でも漏れると問題になっています。日本のマイナンバーは職場や金融機関、役所で、一般的に使われ、アメリカよりはるかに利用頻度が高く、税金還付や、年金受領、はたまた振り込め詐欺などに不正利用されるような気がしてならないと思うのは私だけではないでしょう。
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