「経済回復、この道しかない」をスローガンに円安・インフレ路線を追求したアベノミクスには、どこかひとつでもうまくいったと誇れるような成果があったでしょうか。実際には「経済破綻、この道しかない」としか表現しようのない惨敗続きではなかったかと思います。
今年1月末に日銀が政策金利を史上初めてマイナスにしたときもっとも敏感に反応したのは、政府・日銀が期待していたような銀行による融資実行額の増加でも、債券市場から株式市場への資金移動でもありませんでした。
10年債金利が政策金利に追随してマイナスになる、つまり持っているだけで元本が減っていく債券を保有するほうが、新規融資を増やしたり、株を買ったりして大損をするよりはマシだという金融市場全体としての判断があったのです。2~3%台だった政策金利が0.1%になってもまったく出てこない景気刺激効果が、0.1%からマイナス0.1%に変わっただけで出てくると考える人間の思考パターンは謎だらけです。
もともと、中央銀行が民間金融機関から債権などを買い上げて、代金を金融市場に流してやる「量的緩和」を金融緩和の手段として使い始めたのは、金利がもう低くなりすぎて、これ以上利下げをしても効果はタカが知れているという状況判断があったからでした。
「とにかく、市中に流通するカネの量を増やせば、決まった量のモノやサービスを今までより多くのカネが追いかけ回すから、物価が上がる。物価が上がれば、企業は増産意欲を持つし、消費者はもっと値上がりする前にと買い急ぐから、どんどんインフレ率の上昇とともにモノやサービスの生産量も拡大する」という穴だらけの見本のような論理でした。
2009年まではまだ100兆円台だった日銀総資産は、今や400兆円を超えています。もし、政府・日銀の経済政策が好ましい結果をもたらすものであれば、たった6~7年のうちに日銀総資産が4倍近い激増となったら、何かしら良いことが起きているはずです。
そして、日本国民のあいだにインフレは望ましい状態だという共通認識があれば、これだけの総資産の膨張によって債券やら上場投信(ETF)やらを買いつづけて増やしてきたマネタリーベースの拡大をほんのわずかにでも反映して、インフレ率は第二次安倍政権発足当初より上がっているはずです。
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